私達は,大型のゴム風船中の水素-空気混合気を爆発させ,高速度ビデオで撮影し,風船からの距離が異なる複数の地点で爆風圧力を計測しました.その結果を基にして爆風の保安距離を算出しました.先ずは実験装置の概略と水素爆発の動画を御覧下さい.
わずか50g程度の水素爆発でかなりの威力の爆風が観測されます.我々と他の研究者の実験データをまとめて整理して,爆風過圧力(縦軸)と距離の関係(横軸)を得ました.データにはドイツで行われた2000m3の実験も含まれています.爆風の圧力は距離と共に減少します.尚,グラフは無次元化してあります.
ここでは,爆風過圧力が0.01気圧となる距離を,爆風保安距離とします.この圧力は窓ガラスが破壊し始める過圧力に対応します.無次元化したグラフを基にして,爆風保安距離R*(単位m)と水素の質量MH2(単位kg)の関係を以下の式で表します.
R*=53×(MH2)1/3
ここで,代表的な水素ステーションの水素貯蔵量70kgの爆風保安距離を考えます.貯蔵量の何パーセントが燃焼するか,変化させて計算した結果をグラフに示します.先に述べたスウェーデン・ストックホルムの水素爆発事故では10%が燃焼したという推算がありますが,10%の場合には,保安距離は約100mとなります.1%でも約40mが保安距離となります.従来のガソリンスタンドの保安距離6mと比べて,かなり大きな距離が必要となります.